2012年7月31日火曜日

旅行けば物語/筑摩書房・編

高浜虚子、幸田露伴、柳田国男、坂口安吾、アンデルセン、ユゴー、ヴォルテール、永井荷風などそうそうたる文豪達が名を連ねているが、各々、各地方地方の旅行記、紀行的なものが多く、物語性に欠け、必ずしも面白いものではなかった。ガイドブックの要素が強く、特にドラマティックな展開もなく、淡々と進み、唐突に終わる、そんな文章が多い。あるいは私の苦手な「文学」的な要素もあるのかもしれない。

2012年7月19日木曜日

壜の中の手記/ジェラルド・カーシュ・著

極寒の地で十万年以上前の冷凍状態から蘇生した女性と16年間を共に過ごした男性の話「凍れる美女」  広島に在住していた男が、その原爆投下の日、その衝撃で200年前のイギリスサセックス州にタイプスリップし、そこの漁師達に、正体不明の怪物として生け捕りにされる「ブライトンの怪物」   クルーガーとういうちっちゃな銃会社を一人で、大企業へ、そして、戦争当事国に乗り込み、両大統領に巧みに取り入り、大量の兵器を売りつけ、巨万の富を得、もはやどの国もクルーガー社のこの男、主人公サーレクに刃向かう国は無くなり、それでも武器を作り続け、最後は自らの作った最新毒ガス兵器によって、自ら滅んでしまう「死こそ我が同士」他全12編。

原題 The Oxoxoco Bottle and other stories/Gerald Kersh

2012年7月11日水曜日

野比家の真実/日本ドラえもん党・著

累計発行部数6000万部を誇る、現在も進行中の、いわずと知れた「ドラえもん」をバカバカしくも、しかし、まじめに科学的に捉えたガイドブックのような本。類似ものに「磯野家の謎」「空想科学読本」などがある。内容は、ドラえもんの四次元ポケットから出てくるグッズの研究だったり、登場人物各々にスポットをあて、彼らの人物像を解明しようとしたり、暇つぶし的には面白く読める。
のび太が自分と全く同い年なのには驚かされたが。。。

2012年7月10日火曜日

いたこニーチェ/適菜収・著

吉田武昭は、久しぶりに会った同級生・三木に霊媒体質があり、そこに乗り移った19世紀の天才哲学者ニーチェに会い現在の悪しき自分の生き様を批判され、やがて、受け入れ、真の自分の世界を切り開いていく。
 ニーチェは「キリスト教の腐敗」「絶対的な真理などない」という当時でも相当とんがった思想の提唱をおこなった奇才。そして、著者の適菜氏も哲学者。「哲学」と聞けば皆しり込みしてしまうものだが、それをなるべく日常生活的なものに置き換えて、おもしろおかしく説明してくれていて、大変好感が持てる本書だった。少なからずふきだしそうな場面もあり、本気でニーチェの著書を読むにさせてくれる。それにしてもニーチェって人はスゴイ。

2012年7月5日木曜日

熟れてゆく夏/藤堂志津子・著

裕福な独身夫人と仲良くなった律子は、バカンスに誘われる。それは夫人と若き愛人・紀夫とのカモフラージュでもあった。しかし、突然夫人の参加が遅れることになり、紀夫と律子が先行して行く事になった。そしてそれは、夫人のたくらみであった。紀夫と律子を結びつけ、夫人を交えて3人で性愛にひたるために。
男嫌いであった律子はしかし、反発しながらも次第に紀夫に惹かれていくのだったが、その夫人の計画を知って紀夫の言うとおり、お互いに仲良くなった振りをする。
律子は以前少女時代に親戚の2つ上の子、道子と3年ほど暮らした事があった。物静かな道子は律子の恰好の餌食であった。若く幼い律子はいたずらを繰り返し、言葉でいじめた。ふざけあっているうち、道子は律子のくすぐりを愛撫としてとらえ、性に目覚める。また当事者の律子は幼いながらも漠然と性的な興奮を道子が味わっている事を感じる。この記憶が女性との性的な興奮を蘇らせ、男をしりぞける原因でもあった。
紀夫と仲良くなったとみせかけ、遅れてきた夫人を出迎える律子。そして唐突に夫人に別れの言葉をあびせ、踵を返すのであった。